映画「コクリコ坂から」

ゲド戦記からのトラウマからかあまり見るモチベーションがなかったのですが、ようやく重い腰を上げて見に行きました。
率直な感想を言うととても良かったと思います。けれども映画じゃなくてもテレビドラマでよかったような気もしています。
1960年代を描くということについて、20世紀少年で散々と描かれたものとは別の雰囲気だったわけですが(小学生と高校生の違いか)、ちょうど親の青春時代だったわけで妙な感じがしてしまいました。学生運動といっても特に美化されたものというわけでもなく、高校の時に聞いた母校の学生運動とさして変わらないような印象がありました。淡々と日常が過ぎ去る、そんな感じ。
絵の方はというと近藤勝也さんのトーンが満載で個人的にはウハウハでした。ストーリーとしては原作は知らないですが、すんなりまとまっていたと思います。主人公たちよりも彼らの親のエピソードの方が重すぎて涙を誘われます。
そして、個人的に決定的に何が良かったというと絵コンテでした。絵コンテといっても実物と見たわけじゃありませんが、大まかにいうとカット割りとレイアウトです。1つ1つのカットに違和感がなく、人物と建物の密度が程よい感じでした。逆に綺麗過ぎるとか整然すぎるという人もいるかもしれないですが、こういうのもなかなか人の感性や才能に依るものなのかなぁと思いました。(もしかしたら近藤勝也さんの手が入っているかもしれないですけど)
アニメーションの方は古きよきジブリの伝統が受け継げされているようにも思います。
1つ残念な点はファンタジーがなかったこと。これは物足りなさにも通じるのですが、それが映画ではなくてもテレビドラマとして扱った方が良かったんじゃないかと思った理由でもあります。わりと好きな「海がきこえる」(同じ脚本の人らしいですが)もファンタジーはありませんでしたが、映画ではなくテレビ放映のみとなっています。おそらく今回もその方が違和感は無かったと思いますが、お金のかけ方がそもそも違うでしょうし。
デジタル化が進行し家庭でそこそこの環境で映像を見られるようになったためか、映画館ではそれなりの高画質・高音質のものを求める傾向が強くなっている気がしています。実写やCGの世界はその点は目覚しいものがあります。一方で、アニメーションにとってはその傾向は好ましくなく、新海さんの絵やエヴァのリメイクは映画館で見る意味・意義を感じられるのですが、それ意外の作品はぱっとせず、逆にテレビアニメの隆盛に繋がっているように感じています。
というか、今回の鑑賞はたまたまあまり環境に恵まれなかったなぁと思うと余計にそんなことを感じてしまいます。映画館に行ってわざわざ不愉快な思いをするくらいなら、ゆったりとした映画は家でゆっくり見たいものだと。