映画「未来のミライ」

テレビで見たわけですが、もっと早く見ていればよかったなぁという作品でした。

公開当時、あまり周囲の評価が芳しく無く鑑賞を見送っていました。ネット界隈でも賛否両論だったようですし(ネタバレ遭遇するのも本意ではないので詳しくは追っていない)優先順位はずるずると下がっって鑑賞しませんでした。

細田作品はというと、だんだんと失速気味の感が否めなく、特に共同脚本家が不在となってからは、ストーリーの観点ではあまり良い印象はありませんでした。本作については、手放しで素晴らしい!というよりは、共感ポイントが多く、かつ、共感できる層がある程度限られる条件だったと思われるので、単純にこれは良い作品だよっと言いたくなりました。期待値が低過ぎで、思いの外よかった。という状況です。

期待値が低いというよりはズレのようなものですが、それの要因として予告編の作りがミスリードだったのかなと思うところもあります。予告編だけ見ると、主人公のくんちゃんがどこか異世界にいったっきりで、未来の妹と冒険する物語~と思ってしまいますが、実際には丁寧に日常を積み重ねつつ、非日常を折込、しかもそれは自分のルーツを過去から未来までたどる、冒険よりはヒューマンドラマのようなテイストだったのかなと。

タイトルもミスリードだったのかなと思うフシもありましたが、ただセリフやエピソードを踏まえるとそうつけざるを得ない感もありました。ただ、ミライちゃんはあまり出てきません。あくまで主人公はくんちゃん。くんちゃんの成長する物語。

さて、おそらく賛否の「否」がわきおこる要因は、くんちゃんの理不尽なわがままっぷりかと思います。この状況は最後までほとんど変わりません。でも、実際、そんなもんです。3~4歳のしかも赤ちゃん返りも合わさったわがままっぷりは。映画以上にひどい状況なることはしばしばです。ただ、同じようなシチュエーションはなかなかなく、しかも年々と理不尽だった状況は忘れ去ってしまうもので、共感できる層がもともと少ないですし、共感を得る(そういえばそんなことあったなぁ)となる層ももっと薄いと思います。ましてや、真っ最中の方々にとっては、ちょっとつらい演出かもしれません。一方で、そういったシチュエーションに出会わない層(子育てから縁が遠い層)は一つも共感できないと思います。

アニメーションの方はというと細田さんらしいアクションは少なかったですが、細かな設定、特に美術やその背景にある建築だったり素材だったりという部分は、各界の強い人が参画したこともあって、全般的には総合芸術の名に相応しい完成度だったと思います。

ところで、作中のお母さんの実家がどうやら上田らしく、結構リアルな感覚は盛り込まれていたのかなと思うと同時に、自分の家族も似たような構成だったので、これも共感ポイントでした。