手の演技

iPod nano のCMを見てちょっと感動した。
手だけで、かなりのことが表現できていると思う。
抑揚をつけたり、ちょっとした指の位置でニュアンスが変わる。
喜んでいる様子や、物珍しそうにしていたり、
第三者の手が欲しがっていたり(これは分かりやすいと思う)
実は、演出の中で、手の位置だとか振る舞いは意外なほど難しい。


例えば、演技にしてみたら、何もしていない手というのは
不自然なほど目立ってしまう。
やたらと動かしてしまったり、変な位置にあったり。
そこも演出家が制御しなければならないのだけれど
そこが難しい。
人物の画を描くにしても、何もしていない手はとても書きにくい。
何かを持っていたり、何かをしていた方が自然と型は決まってくる。
演説では、ジェスチャーを加えるだけで伝わりやすくなったりする。
つまり、手の動きや位置には表情があり、気づかないうちに読み取っていたりするのだ。
そこへ来て、手だけに焦点を当てたCMにはびっくりした。
iPod nanoの小ささを強調したい意図は分かるが、それだけではつまらない。
「手で語ろう」というようなブレイクスルーがあったのだろう。
最初から最後まで、それを突き通して、面白い表現になった。
もし、ちょっとでも人間の体が出てきたりしたら、一気に興醒めしたと思う。