映画「ラストレター」

久々に岩井さんの映画を見て、岩井さんの世界に浸り、泣かされました。

近年の作品はあまり見てなかったのですが、思い立って観に行きました。テーマも音楽も久々にぐっとくる映画で、従来ファンには嬉しいのではありますが、岩井さんの映画を知らない人が見た時の評価はなんとなく分かれそうだなというのが真っ先の感想です。もうちょっと言うと岩井さんの作り出す映像美は、万人受けするものではないかなと思うし、ただ、呼応する時は、とても深く響くだろうなと思うわけです。

撮影手法はさすがの一言。フォーカスの受け渡しや、ドローンによる撮影など、挑戦的なものもあれば、セオリーどおりアクションラインの制御やコマ割りもさすがでした。また、ナチュラル系の演出は最近は是枝さんが筆頭ですが、(元祖というわけでないですが)やはり子どもたちの演出や俳優たちのポテンシャルを引き出すのはさすがで、特に少年たちが群像でわらわらするシーンが印象的でした。一人二役を演じた2人の俳優もさすがでした。

構造(主要な主人公が一人不在、一人二役、手紙に行き違い、などなど)としては Love Letter を踏襲するものの、テーマとしては普遍的でもありながら、より重苦しい題材というか命題を選んだなと。青春といえば青春ですが、どちらかというとその後の人の人生の黒々とした濁流を垣間見た気がしました。それがトヨエツや中山美穂が出てくるシーンであったり、描かれていない高校卒業後の陰の部分があり。それに対比するかのように高校時代や子どもたちの青春が描かれていました。Love Letter の時よりそのコントラストがきつかったなと。そして、壮年や初老・老後の人々の営みが垣間見れると、岩井さんも自分たちもそれ相応に歳をとったのだなと。

そして、最後の最後で「ラストレター」の意味を回収していくのですが、それはたぶん上の世代から下の世代への普遍的なメッセージなのかなと思うところもあり、時代が経ってもこのメッセージは色褪せないだろうなと思いました。