映画「崖の上のポニョ」

これはちょっと扱いが難しい映画かもしれません。
これは親子で見に行って欲しいです。できればお父さんと。
昔の宮崎作品を見ている人にとっては懐かしいかもしれません。
ハイジがどこに吊るされているかも分からないブランコに乗っていたり、ハイジがおじいさんとベッドのシーツを変える時に、空中に浮いてしまうくらい軽かったり。どでかいパンダが軽やかの動きでジャンプしてたり、ルパンがありえないほどのジャンプ力で屋根の上を飛んだり、コナンがものすごい高さを飛び降りても平気だったり。
宮崎駿の描くアニメーションはそういうアニメーションです。


それらの残像が残っている世代としては見ているだけでも楽しい作品でした。
とにかくアニメーションがすばらしい。高精細なグラフィックというわけではなく、アニメーションがすばらしいのです。
「時をかける少女」でも同じ事を感じましたが、アニメはアニメーション(生命を得たように動くこと)が大事なのです。
このような映画が出てくることは、業界的にデジタルの吸収がひと段落して、純粋に動きとしてのアニメーションを追求している時期になったのかもしれません。
できることならそのメソッドを体系化してジブリの資産として受けついでいって欲しいです。
(ディズニーは徹底的にそれをやった。ピクサーは3DCGにおけるアニメーションメソッドを研究しつくした。職人的な受け継ぎ方も良いが、均質的なアニメを作っていくのであればメソッドを確立していった方が良い)
今回は手描きにこだわったということで継承していってもらえればいいなと思います。
さて、ストーリーの方はというと評価するにはちょっと難しいです。
というのも、おそらくは幼い子供かその親しか共感できないのではないかなと思いました。
幸い自分には姪っ子・甥っ子がいるので(またちょうど主人公の年代なので)、感情移入しやすかったです。
停電のドキドキ感や、即席ラーメンの暖かさ(カップラーメンじゃないところが良い)や、それを食べながら寝ちゃうところは涙がでちゃいます。
しかしながら、冒険したがりの少年やときめきたがりの少女たちにとっては物足りないかもしれません。
あと100分はちょっと長すぎたのかもしれません。
60分で終わればすっきりしたのではと思いました。
声優陣は俳優・タレントを使う傾向はなおりそうもないので特になにもいいません。
両親の声は結構合っていたと思います。
もう1つ注目したのはその両親の関係です。
ちょっと紅の豚を思い出しました。つまり、空から海へ、家族を残して、それでも海にでる。
父親は家族のために仕事に打ち込んでいって、さらにそれが好きな仕事ならば夢中になってしまう一方で、
いくら息子と暮らしているとはいえ、若い母親には寂しすぎるかもしれない。
子供がまだ幼い夫婦の微妙な心情の絡み合いが見ていてちょっと考えさせられる部分がありませいた。
宮崎自身、そういう父親だったのかもしれない。もっといえば結構、そういうお父さんが多いのかもしれない。
一方で、ポニョの父親は娘を閉じ込めておきたい(手元に置きたがる)。そういう感情も理解できます。
そういった理由でお父さんと親子で見に行って欲しいなと思った作品です。
周りは賛否両論でしたが、もしこれが絵本だったら大して違和感ないのではないかなと思います。