映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊2.0」

結論から言うと別にファン以外は見なくてもいい。
ファンが見ても中途半端だと思うのが大半だと思います。
まず音響に関して。
ハリウッドのスカイウォーカーサウンドが担当したらしいけれども、
武器や兵器関連の音が格段によくなった気がします。


関連して、声優も録り直したらしいので、SACのおかげかこなれた感じがしました。
人形使いの声はどちらでも好きですね。
ちょっと残念だったのが、最後、坂本真綾が子供の声を担当しているのですけれど、前のバージョンの方がもっと子供の声だったので、そちらの方がよかったです。
ところどころCGを導入していましたが、マッチしていた部分もあり、そうでない部分も多分にありました。
仕方のないことだと思いますが、その一方で昔のセル画のアニメーションは今見てもそんなに遜色ありません。
むしろセルの方が良い部分もあったはず(特に水中にダイブするシーン)
さて、ストーリーや構成は前のバージョンとほとんど変わらず。
分かりやすくなったという人も居ましたが、それはおそらくやっと時代が追いついてきたということとTVシリーズのおかげかと思います。
一番最初に見たのが中学か高校の時だったので、その時はまだ「ネットワークって何ぞや?」という状態でしたので少しも理解できず、「でもまぁアクションはかっこいいなぁ」と思っていた程度でした。
大学くらいになって、ネットワーク社会にどっぷり浸かって(学校全体がそうだった)改めて見てみると、ようやく理解するための下地ができたのでした。
そしてTVシリーズを踏まえると、現代社会が抱える問題や、これから考えざるを得ない問題を示唆するストーリーになっており、より理解しやすくなったと思います。
この辺りは映画やコミックの主題とは離れますが、「笑い男」や「個別の11人」など、現在起きている事件や事象に少なからず類似していますし、それをもたらしたのが社会のネットワーク化の結果であることも大きな説得材料です。
薬害や移民・難民問題、高齢化社会について扱われていますが、日本にとっては現在あるいは将来あり得る事象です。
それらを背景に、ネットワークが広大に繋がっていくこと、他人と並列化するということ、自分を決定付ける要因が外在化していくということ、などを想像することは、今後のために良いトレーニングになるなと思いました。
話がそれましたが、そららを抜きにしてもこのアニメーションは海外に多大な影響を与えたわけですし、純粋に映像美を楽しむのも良いと思います。
その影響に関して言えば、今回のバージョンでは緑ではなく燈色を基調としています。
緑ですとマトリックスと被りますし(まさに逆転現象)、燈色ならば「イノセンス」にも通じます。
インターネットが黎明期だった頃、それらを考え得ていた士郎正宗やそれを映画化した押井守はすごい人だなと思いました。