風の博物誌 その2

 同じ天候変化のもとにおかれた二人の人間でも、あるいは同じ人でも時間が異なれば、反応が違う。逆に二種類の異なる天候変化に同じ反応を示すこともある。未来の反応は直前の事態に規定される。これが初値法則である。

 天気に対する感度というものがあるとすれば、天気に関しては処女はひとりも存在しないというのがこの法則だ。どんな体験でも二度目か三度目のもので、それ以前に受けた刺激と切り離して考えることはできない。すべての反応はそれ以前の刺激と興奮の程度によって決まってくる。この法則によると、すでに呈している興奮の程度が低いほど、次に来る刺激に強く反応する。三杯目や四杯目のコーヒーは一杯目の美味さに比べると比較にならないし、むしろまずく感じることさえあるが、このような逆の反応すら出てくる。

ライアル・ワトソン, 木幡和枝訳. “風の博物誌”. 河出書房新社, p379, 1990.
すごいな、この本。
言いたいことが次々と書いてある。