本「福翁自伝」

やっと読み終わりました。
感想としてはおじいちゃんの昔話を聞いているみたいで面白かったということです。
内容は自伝なので、さして慶応がどうこうという話でもなく、世間話のような昔話です。
注釈やあとがきは慶応への忠誠心が非常に感じられましたが。


福沢先生は歴史の表舞台には出てきませんでしたが、現在は近代文明の礎を築いたとして、一万円札の載るほど有名になっています。果たして、本人はどれほど自覚があったか少しばかり不明です。
言えることは、根っからの学者だということです。学者なので、知識以外のことは別段気にすることがなく、現在の慶應義塾は福沢先生が作り上げたというよりは、自然とこうなったという印象です。
根っからの研究者で、その点では見習うべき点(共感できる点)が多く、もう少し早めに読んでおけばよかったなぁと思います。特に、先日も書きましたが、留学前の息子2人に言いつけた事はとても心苦しいばかりです。健康に気をつけます。
印象的だった(面白かった)のは大阪での適塾でのエピソード。
当時はえらく気候が暑く、講義を受けるものは全員素っ裸で、むっせかえる様な環境の中でひたすらに勉強していたのだそうです。そして、辞書は1つしかなく、1つの辞書によってたかって10人ほどが同時に調べ物をしていたのだそうです。
もう1つ印象だったのが榎本武揚とのエピソード。
特に深い交際関係ではなかったけれども、榎本が助かるように尽力したそうです。その動機については人の縁と恩ということになりますが(妻の縁戚関係がうんぬん)、表向き榎本武揚の特赦については彼の能力を政府にかわれたという事になっています。確かにそうなのですが、その伏線を張ったのが福沢先生らしいのです。根回しや変化球で対応する辺りが、教授たちと似ているような性格がしたので少し驚きました。
このように身近に歴史上名だたる人物の名前が出てきますので、単純に歴史本としても面白かったと思います。当時の風俗も知ることもできましたし、あまり幕末には興味がなかったのですが、勉強にもなりました。
ちなみに、福沢先生は25歳の時に蘭学から英学に転向したそうですが、私も頑張れは英語はなんとかなりますかね。と思ったり。
多少なりとも研究に携わる人は読んでみてると良いと思います。