映画「かぐや姫の物語」

「風立ちぬ」がジブリの伝統芸能であるならば、「かぐや姫の物語」は日本人が後世に伝えるべき文化財(文化遺産)のようなものだろうと思いました。
大げさかもしれませんが、それが率直な感想です。
ストーリーは特に奇をてらったものではなくて、ごくごく原作通りに進みます。ネタバレとかそういうものでもなく、なんとなく高級な日本昔話といいますか、細やかな脚色(演出と言っていいかもしれませんが)が所々ある程度で、淡々と進めていく感じがしました。ポイントとしては脇役の女の童がいい味を出していて、最後も粋な演出がありました。このキャラがいたおかげでだいぶエンターテイメント性が保たれていたような気もします。
冒頭の10分くらいに感情移入する部分はあるのですが、隣のおばちゃんが既にボロ泣きだったため、若干引いいてしまい、感情移入しきれなかった感は否めないです。そこでしっかり乗っておけばラストでも泣けたのかなぁと思います。なので冒頭10分が大事です。
音楽はジブリでお馴染みですが髙畑監督は初タッグとなる久石譲で、これまたもののけ姫以来となる和の久石節を聞けただけで、個人的にはとても満足でした。特にクライマックスの月からのお迎えがくるシーンの曲はそこだけ繰り返ししばらく聞いていたい音楽でした。このためだけにサントラを買いたいくらい。ちなみに、月からのお迎えのシーンは阿弥陀如来の来迎のシーンそのもので、来迎とは(何で読んだかは忘れてしまいましたが)「阿弥陀如来がいわばオーケストラを編成し極楽浄土からお迎えにやってきて、当時の人にとっては一大エンターテイメントだった」訳ですから、音楽といい演出いいとてもガッテンいきました。
随所に出てくる童歌は(髙畑監督作曲だそうですが)頭に残りやすく、これはこれで好いです。
そして、なんといっても作画とアニメーションがこの映画の主な見どころで、一見、何気ない画風に見えるかも知れませんが、この作画の過程を想像しただけでも鼻血が出そうなほど気が遠くなります。そりゃ製作期間が7~8年もかかるってものです。では日本の独自の技術かと言われると、そうでもなくで、どちらかというと世界的に見て伝統的なアニメーションの手法とも言えると思います。アート系アニメーション(ざっくりいうとアカデミー賞短編アニメーションに出てくる感じのもの)を言われるものは1枚1枚画を描いていくものですから、今後はそちらの系譜に位置づけられるような印象でした。
今後の映像やアニメーションの授業などで教材として用いられることもあるんじゃないかと思う作品でした。
いずれ子どもにも見せておきたい映画です。